私たちは2006年4月に多摩美術大学に入学し、それから現在まで、版画にまつわる多様な表現技法を体験しながら、学んできた。
2年次からは、木版画・銅版画・リトグラフの3版種から選択し、それぞれの工房で日夜制作をしている。個々に差はあっても、私たちにとって今や“版画”と“版画科”は生活の大部分を占めている。
ところで、そもそも“版画”ときいて何を思い浮かべるだろう。浮世絵に代表される木版画だろうか?ここではリアルタイムに版画を学ぶ学生の、リアルな“版画”を紹介したいと思う。
そして、「HANGA EXPRESS」の根底にある、25名の“版画科”を、紹介したいと思う。
三つの版種は、それぞれのなかにも多くの技法がある。しかし、全ての版画には共通項もある。“刷り”という行程である。
それは、他の絵画領域と大きく異なり、制作意図や作為が、版、あるいはプレス機などの「他者を通過する」ことの不可避を意味する。
その「他者を通過すること」、それ自体を『版表現』とするとき、木・銅・アルミなどの媒体にとらわれない、より自由な『版表現』をみることができるはずだ。
その視点で『版表現』をとらえたとき、例えば日々の生活のなかにも『版表現』は溢れてくる。(テレビや写真などもそれにあたるかもしれない。)
版画を学んできた私たちにとって、その自由は時に不自由にもなりえる。しかし、広い意味での『版表現』と向き合うことが、もうすぐ4年生になる私たちにとって、今、必要なことかもしれない。
それぞれにとっての『版表現』、その答えをみつけることが今回の展示の目的のひとつであり、私たちの『版表現』への挑戦である。